寝室に木材系内装や家具が多いと働く人の不眠症の疑いが少ないことを実証:筑波大学睡眠疫学プロジェクト(2020年受賞)

    働く男女を対象にした睡眠健康調査から、寝室に木材・木質の内装や家具、建具が多いと回答した人は不眠症の疑いが少なく、やすらぎを感じている割合が高いことが明らかになりました。

    掲載情報の概要

    木材を見たり触ったり、木の香りを嗅いだりすると、心身に良い影響があることがわかっています 。 これらのことから、木材・木質材料に囲まれた住環境で眠れば、良い睡眠が得られる可能性があります。 これを検証するために、働く人を対象にして、日常の睡眠や住環境に関する健康調査を実施しました。 その結果、寝室に木材・木質の内装や家具、建具が多いと回答した人は不眠症の疑いが少なく、寝室 で精神的なやすらぎを感じる割合が高いことが明らかになりました。寝室に木製の家具を置くなど、 木材・木質材料を多く取り入れることにより、不眠症状の緩和や良い眠りが得られることが期待されます。

    【受賞作品名称】寝室に木材系内装や家具が多いと働く人の不眠症の疑いが少ないことを実証:筑波大学睡眠疫学プロジェクト
    【受賞者】国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 / 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 /筑波大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループ/帝京大学
    【表彰部門】ハートフルデザイン部門
    【対象部門】調査・研究分野
    【サブカテゴリ―】調査・研究/木材利用による環境影響・貢献に関する調査・研究

    作品概要

     木材を見たり触ったり、木の香りを嗅いだりすると、心身に良い影響があることがわかっています 。 これらのことから、木材・木質材料に囲まれた住環境で眠れば、良い睡眠が得られる可能性があります。 これを検証するために、働く人を対象にして、日常の睡眠や住環境に関する健康調査を実施しました。

     その結果、寝室に木材・木質の内装や家具、建具が多いと回答した人は不眠症の疑いが少なく、寝室 で精神的なやすらぎを感じる割合が高いことが明らかになりました。寝室に木製の家具を置くなど、 木材・木質材料を多く取り入れることにより、不眠症状の緩和や良い眠りが得られることが期待されます。

    多くの人が睡眠に問題を抱えています

     日本における平均睡眠時間は世界的にみても短く(OECD 2021)、成人の3割以上に不眠の症状があるとの報告があります(Ikeda M, et al. Sleep and Biological Rhythms, 2014)。睡眠障害や睡眠不足による生活の質や作業効率の低下は、社会的、経済的に甚大な損失をもたらすため、働く人たちの睡眠を改善することが重要です。

     より良い睡眠を得るために、多方面から多角的なアプローチがなされており、例えば、寝酒をしないなどの生活習慣の改善が必要なことはわかっています。

    木材・木質環境が睡眠に良いのかはあまりわかっていませんでした

     木材を見たり触ったり、木の香りを嗅いだりすると、心身に良い効果があることがこれまでにわかっています。これらのことから、木材・木質材料に囲まれた住環境で眠れば、良い睡眠が得られる可能性があります。しかしながら、木材・木質の住環境と睡眠との関連性や因果関係を検証した研究は極めて少なく、わかっていないことが数多くあります。

     そこで、森林科学、睡眠医学、産業精神医学(働く人たちの心の健康を守る医学分野)の研究者の共同研究により、木材・木質に囲まれた住環境が睡眠に良いか検証しました。

    寝室に木材・木質が多いと不眠症の疑いは少ないことがわかりました

     茨城県と東京都の4つの職場で働いている方を対象にして(671名;男性298名、女性373名:年齢 22 ~ 68歳、平均43.3歳)、睡眠に関するアンケート調査を行いました。アンケート調査では、家屋の住環境や自身の寝室、睡眠の状態、生活習慣等に関する質問に回答していただきました。この中には、寝室内に木材・木質の内装や家具、建具の量がどの程度あるのかについての質問もあります。不眠症の疑いは、アテネ不眠尺度で判定しました。

     アンケートを統計的に解析した結果、寝室に木材・木質材料が多いと回答した人たちは、少ないと回答した人よりも、不眠症の疑いのある人が少ないということがわかりました(図1)。さらに、寝室に木材・木質が多いと回答した人たちは、寝室で安らぎや落ち着きを感じる割合もより高いことが明らかになりました(図2)。これらの結果は、対象者の年齢や性別、生活習慣等も考慮したデータ解析を行っても、同様でした。


    図1 寝室の木材・木質量別の不眠症の疑いの割合
    寝室内の木材・木質量が多い群ほど、不眠症の疑いの割合が低い。
    (Morita et al. 2020を改変)

    図2 寝室の木材・木質量別の寝室で精神的なやすらぎを感じる割合
    寝室内の木材・木質量が多い群ほど、精神的な安らぎを感じている割合が高い
    (Morita et al. 2020を改変)

    木質内装のイメージ:森林総合研究所実験住棟(提供:森林総合研究所)

    掲載情報の詳細

    論文元/参考文献1
    【研究成果:森林総合研究所成果選集】木のぬくもりあふれる寝室で良い眠りを https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p22-23.pdf
    論文元/参考文献2
    【外部サイト】林野庁補助事業ウッド・チェンジ特設サイト「木材を取り入れて良い眠りを。木材と睡眠の関係とは」(紹介記事) https://event.rakuten.co.jp/area/japan/woodchange/columns/column_2/
    論文元/参考文献3
    【外部サイト】キノマチウェブ「木のぬくもりあふれる寝室でよい眠りを。睡眠に関する研究」(ニュース) https://kinomachi.jp/2357/
    論文元/参考文献4
    【筑波大学睡眠疫学研究プロジェクトの紹介】クラウドファンディング「人はなぜ眠る?最適な睡眠とは?「睡眠の謎」に最新の科学で迫る」 https://readyfor.jp/projects/wpi-iiis
    論文元/参考文献5
    【研究機関の紹介① 動画3分】筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 https://youtu.be/kX9HKvff310
    論文元/参考文献6
    【研究機関の紹介② 動画8分】(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所 https://youtu.be/8YsWDpZeD7w
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