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「ウッドデザイン賞2023」最優秀賞・特別賞(大臣賞)受賞作を紹介!【前編】コミュニケーション分野・プロダクツ分野の2作品
木で暮らしと社会を豊かにするコト・モノへ贈られる「ウッドデザイン賞」。2023年の受賞作品が決定し、同年12月6日、東京ビッグサイトで開催されていた「エコプロ2023」で表彰式と受賞記念セミナーが行われました。
こちらの記事では、最優秀賞、特別賞の受賞作を紹介します。前編では、コミュニケーション分野とプロダクツ分野からそれぞれ1点ずつ、後編では建築・空間分野の5点を取り上げます。
木と手仕事ならではの温かさが感じられる「森 tebaco」
最初にご紹介するのは、最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞した「林業×福祉連携プロジェクト『森tebaco』」です。コミュニケーション分野 ソーシャルデザイン部門から選出されました。
パワープレイス株式会社、社会福祉法人 幸仁会 川本園、NPO法人 木育・木づかいネットの3者が共同で受賞していますが、このうち川本園は障がい者の方々が働く就労支援施設です。
「このお話があった当初は、職員から『これは障がい者の人には難しい作業ですよ』などとどうしても後ろ向きな感想も聞かれたのですが、パワープレイスや木育・木づかいネットの皆さんと一緒に進めていくうちに、どうすればできるかを考えるようになりました。森 tebacoによって、障がい者だけでなく職員も生き生きとしたことは、大きな喜びです」(川本園理事長の田中初男さん。写真)
森 tebacoがどんな作品なのかというと、ヒノキ材を用いた時計・写真・カレンダーのフレーム。材料は川本園と同じ埼玉県で採れたものです。表面の大きさは13cm四方で、仕事の細かさと木ならではの温かみの両方が感じられます。
審査委員の増田文和さん(プロダクトデザイナー。写真)も受賞記念セミナーで、「これが間違いなく1等賞だ! と思って選びました。直線的なデザインではない点も、人の手仕事が表現されていて温かみを感じられます」と評価。
一方、受賞者の声によると、森 tebacoにはまだまだ課題があるといいます。川本園には加工機や自動カンナなどといった設備があり、まさにプロが木工の仕事をするための環境が整えられています。
しかし、日本全国の就労支援施設が同じだというわけではありません。
そのため、森 tebacoの成功体験をどうスケールアップさせ、多くの障がい者の方々と健常者が喜びを感じられる仕組みをつくるかが次なる課題だと、木育・木づかいネット理事長の浅田茂裕さんは語ります。
木育・木づかいネット理事長の浅田茂裕さん(左)とパワープレイスの奥ひろ子さん
なお、川本園のウェブサイト には森 tebacoの他にも多くの商品が紹介されています。こちらも温かさと匠の技を感じさせるプロダクトばかりですので、ご覧になってはいかがでしょうか。
軽くて強い木材を実現した「Gywood®」とテーブル用天板
続いては、最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞した「Gywood®テーブル用天板」です。
Gywoodは「ギュッド」と読みます。木材を〝ギュッ〟とプレスして圧密することで、強度や加工性などを向上させつつより多くの木の活用も見込める技術の名称となっています。
そして、このGywoodの技術から生み出されたのが、今回の経済産業大臣賞受賞作となったテーブル用天板。Gywoodで利用される材料は主にスギであり、外観のリッチさや強度だけでなく、軽さも特徴です。また、Gywoodの商品ラインナップには座卓もあるのですが、開発したナイス 脱プラ化・木質化R&Dセンター センター長の青木良篤さん(写真)は、「女性1人でも簡単に持ち運びが可能です」とアピールします。
なおテーブル用天板は、既存のプラスチック製天板をGywoodに交換するものです。そのため、すでに使われている会議用テーブルを活かしながら、オフィスなどの木質化が可能となっています。
Gywoodについて、審査委員の益田さんは「2018年にも優秀賞(林野庁長官賞)を受賞しているので、素晴らしい製品であることはよく知っています(笑)。なので、青木さんにいろいろ聞いてみたい」と質問を開始。
スギ以外の木材は利用できないのかと問われた青木さんは、「ヒノキやアカマツ、トドマツなど針葉樹全般でGywoodでの圧密が可能です。マツはヤニがあるので取り扱いに多少の注意は必要なものの、強度などは問題ありません」と答えます。
値段については? という質問には、「圧密している以上、そのままの状態で木を使うより多くの材料を利用します。なので、値段が高くなる場合もあるのは事実です。ただ、最近はお客様から『ちゃんと使える』、『長く使える』との声を聞くことが多くなってきました。値段の分の価値のある商品だという自信があります」と青木さん。
経済産業大臣賞を受賞したテーブル用天板はあくまでもGywoodの技術が用いられた商品の1つです。今後、Gywoodがどのような新しい展開を見せ、オフィスや住宅で存在感を発揮していくのか、楽しみですね。
記事の後編では、建築・空間分野の受賞作を紹介します。