広報活動
「サザエさん森へ行く 植樹ツアー2023in秩父」を開催しました2023年10月28日(土)
「サザエさん森へ行く 植樹ツアー2023in秩父」
「お魚くわえたドラ猫〜♩」。この曲を聞けばきっとあの一家を思い出すでしょう。そう、サザエさん一家です。
日本ウッドデザイン協会は伊佐ホームズ株式会社と共同して、秩父の森にサザエさん一家と植樹に行く「サザエさん森へ行く 植樹ツアー2023in秩父」を2023年10月28日に開催しました!
今回は当日の様子をご紹介致します。
その前に、どうしてサザエさんと植樹をするのか、疑問に思われる方もいるでしょう。その理由は、海と森との切っても切れない関係にあります。
私たちの暮らす日本は海に囲まれていますが、その海を豊かにするために欠かせない要因の一つが森です。
森に降った雨は、地中にしみ込んで土の中の栄養分を含み、川へ流れ込みます。川の水は里の田畑や都市の生活や産業を支えながら海へ栄養分を運び、それによって、海ではさまざまな生物が育ちます。このことから、海を育むのは森であり、森の質が海の豊かさを決めるともいえます。
国土の約7割が森で覆われている日本では、古くから人々は森と共に暮らしてきました。戦災復興や高度経済成長期のなかで沢山の木材が必要となったものの当時の森林資源は不足気味でしたので、木材として使う木を育てるための人工林が作られました。人工林は人が管理し続けないと森の機能が低下してしまいますが現在は成長量に比べ使う量が少ないために「伐って、使って、また植えて、育てる」というサイクルが崩れはじめているのです。
普段都会に暮らす私たちは、森の危機を「自分事」として捉える事は難しいかもしれません。しかし、私たちがこれからも暮らしていくには、森という資源の循環利用の「輪」を確かなものにしなければなりません。それは海の豊かさを守ることにもつながります。
そこで今回、「持続可能な木材利用」を推進する日本ウッドデザイン協会が伊佐ホームズ株式会社と共に、海にちなんだ名前を持ち、日本家族を代表するサザエさん一家に、森を育むための活動への協力をお願いしたというわけです。
その名も「森林の輪(もりのわ)」応援団(※林野庁による委嘱名称)。2023年10月28日、秋晴れの気持ち良い日。サザエさん一家と共に、約120人の参加者達がS-TRAIN1号(元町・中華街と西武秩父を結ぶ西武鉄道の有料列車)に乗って、秩父の森へ植樹に出発しました。
「S-TRAIN1号」で出発
スタート地点は港町横浜にある元町・中華街駅。電車に乗ると、サザエさんがお出迎えをしてくれました。横浜を出て東京の街並みを抜ければ、車窓の風景も変わってきます。元町・中華街駅からおよそ2時間半で、荒川の源流のある秩父へ。
「S-TRAIN1号」ではサザエさんがお出迎え
森と関わりの深い秩父市
西武秩父駅に降り立つと、秩父市長と秩父市イメージキャラクターのポテくまくんが歓迎してくれました。
秩父市には荒川の源流があり、荒川を使って森で伐った木を運んでいた歴史があります。古くから森との関わりが深い土地です。今も森林保全や林業に対するさまざまな取り組みが行われており、2025年には全国植樹祭も行われる予定です。
植樹場所へ
バスを降りて植樹場所まで森の中を歩いていると、右手に神社の鳥居が見えてきました。龍神社です。古くから荒川の水源になっているそうで、これがやがて海に流れ込んでいくのかと思うと、深い森の中にいながら、森と海とのつながりを感じます。
植樹場所に到着すると、ミズナラ、コナラ、クロモジ、サンショウ、クリ、アケビ等の約25種類の苗木が私たちを待っていました。どれもこの地に昔から生えている木です。
それぞれの参加者が苗木を選んで桶の水に浸し、周りの苗木と50〜60cm程間隔をあけて、ポットの1.5倍程の大きさの穴を掘って植えていきます。参加者の中には小さな子どももいましたが、硬い土を一生懸命掘って植えていました。
植え終わったら畝全体を藁で覆い、縄で固定します。複数の種類の苗木を交ぜて密に植えることで、植物間の生存競争によって早く、丈夫に育ち、災害にも強いとされています。
約25種類の苗木を植樹しました
昼食
森を抜ける気持ちよい風を感じながら昼食を食べていると、歓声が上がりました。サザエさん一家の登場です。私たちが苗を植えた場所を見て、サザエさんたちもなんだかうれしそうでした。
上原巌先生による森の講話会
植樹場所からほんの少し移動し、参加者は思い思いの場所に座って上原先生から森のお話を聞きました。
この場所は一見すると自然の森に見えますが、実は薪炭林という薪や炭として使う木を育てるための森で、人の手が入っている森だそうです。明るくひらけていて気持ちよい森ですが、秩父の森すべてがそうではありません。
バスで移動している時に見えた森は、スギやヒノキが生えられ、管理されず薄暗く鬱蒼としていました。人の手入れを待っている人工林です。
お話の途中、「自分のお気に入りの場所をみつけて10分間横になってみましょう」と先生が提案しました。やわらかな土の上にゴロリと横になって上を見ると、木のこずえがお互い重なり合わないように、絶妙な距離感で太陽の光を受け取っています。あまりにも気持ちよくてそのまま眠ってしまった子も。
また、「森の赤ちゃん」を探してみようというアクティビティも行いました。よく探してみると、さまざまな木の芽が土から顔を出しています。1番素敵な森の赤ちゃんを見つけた子に先生が出版された絵本がプレゼントされました。この本でもっともっと森に興味を持ってくれるといいですね!
東京農業大学の上原巌教授
金子製材所見学
次は創業90年を超える国産材専門の製材業者である金子製材所へ。伐採された丸太がどういった工程を経て建物に使われる製材品に加工されていくのかを説明していただきました。
ここで製材された木材は、大学のキャンパスや保育所、市民体育館等で使われているのだそう。私たちの身近な建物にも国産材が使われているのを知りました。
製材所では、「木のプール」などによく使われている卵型の「もりたま」の製造工程も見学させてもらいました。ヒノキの角材が機械によって卵の形になっていく様は何度見ても飽きません。子どもたちも熱心に見学していました。
お土産にもらった「もりたま」からは、ふんわりヒノキの香りがただよっていました。みんなが笑顔でその香りを嗅いでいたのが、とても印象的でした。
森林の輪を次の世代へ
都会で暮らしていると忘れがちですが、私たちも「森林の輪」の中で生活しています。
今、その「森林の輪」の一部が機能しなくなってきたことが問題になっていますが、それは私たちが国産の木を生活の中で使っていくことで、まだ回復させることのできる段階にあります。毎日の生活の中で自分が使うものを考えて購入する。そういった一歩を踏み出すことが大切なのだと思いました。
苗木から森になるまでには、何十年もの時間がかかります。森の機能が回復していくには、さらに時間がかかることでしょう。しかし、嬉しそうに植樹をしたり、夢中になって「もりたま」ができていく様子を見つめたりしている子どもたちの姿を目にすると、彼らの将来のためにも、今こそ私たち大人が一歩を踏み出さなければならないと強く感じる1日になりました。