調査研究
「子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果に関する研究」
木材で子どもたちの疲れを癒やすアイテム・空間を!
作品概要
子どもたちがとても疲れている、そのような実態をご存知でしょうか。大阪市の約 5.300 名の小中学生を対象にした疲労の実態調査(2016 年)では、小学 4 年生から 6 年生の 30%、中学生の 46%が 1 ヶ月以上続く疲労状態にあり、子どもの疲労は深刻な状況となっています。
子どもの疲労は睡眠の乱れが大きく関係するため、十分な睡眠時間の確保など、生活習慣の是正が疲労回復・予防にとって重要です。さらにプラスして、子ども向けの抗疲労ソリューション(家電、食品や環境、空間など)を開発することも子どもの健康増進につながりますが、当時、この領域での研究は行われていませんでした。
積水ハウスでは 2009 年から大阪市立大学医学部(元・大阪公立大学)と抗疲労効果のあるリビングの研究を行っていました。そこでは大人が帰宅後や休日にゆっくり休む自然が豊かな空間を開発しましたが、子どもたちにとって良い抗疲労ソリューションとしては、家で勉強に励んでも疲れにくい空間をターゲットとしました。
研究では、木質内装空間(床、壁 2 面、天井、テーブルを木質材料で仕上げた部屋)と白色内装空間(全て白色の材料で仕上げた部屋)のそれぞれの部屋で精神的疲労を感じる課題を行ってもらい、その前後に自律神経機能と注意制御機能を指標とする疲労度を測定し、子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果を検討しました。
結果として、木質内装空間においてのみ、疲労負荷後の副交感神経の活動が亢進し木質内装空間は疲労回復効果が高いことが示唆されました。さらに、木質内装空間は白色内装空間に比べ疲労により低下しやすい注意の抑制機能のパフォーマンス(課題の正答率)低下を抑える効果が認められました。これは、注意の抑制時に活性化する前頭前野の機能が維持されている効果を示唆しています。これらの結果から木質内装空間は子どもの疲労を和らげる空間であることがわかりました。
この研究デザインを活用した子どもたちのための研究開発は、その後、大阪公立大学を中心に様々な分野で行われることとなりました。積水ハウスでも、子どもたちの短時間の勉強や宿題に最適な「「立って勉強できるカウンター」の研究なども行い、お客様にご提案しています。今後も様々な分野で、子どもの抗疲労に関わる研究開発が進むことを期待しています。
受賞作品名称 | 「子どもにおける木質内装空間の抗疲労効果に関する研究」 |
受賞者 | 積水ハウス株式会社(大阪府)/大阪公立大学(大阪府) |
表彰部門 | ソーシャルデザイン部門 |
対象分野 | 調査・研究分野 |
サブカテゴリー | 調査・研究/木材利用のマーケティング・販促に関する調査・研究 |
評価ポイント
木質内装空間と、非木質の空間における子どもの抗疲労研究で社会性あるテーマだ。今後、保育関連施設を作るための良い指標となり、施設の木造あるいは木質化の際のエビデンスになる
関連リンク
大阪公立大学、大阪市淀川区による子どもの睡眠や疲労の調査:ヨドネル(子どもの睡眠習慣改善支援事業)