調査研究

【インタビュー】森林・林業白書セミナー 講演者インタビュー「森林資源の循環利用の確立に向けて~木材利用と再造林をつなぐ~」

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2026.07.26

森林・林業白書セミナー 開催後インタビュー

日本ウッドデザイン協会は、2026年7月13日(月)、経団連会館において「令和7年度 森林・林業白書セミナー」を開催いたしました(会場・オンライン併催)。

本開催報告では、当日の講義概要に加え、セミナー終了後に実施した登壇者インタビューを収録しています。講演内容をさらに深くご理解いただけるよう、講演の背景や今後への展望などについてもお話を伺いました。

森林・林業白書につきましては、林野庁 林政部 企画課 年次報告班 課長補佐 市川隆史氏に開設いただきました。

【当日配布 解説資料及び動画】

令和8年度 森林・林業白書セミナーの資料および動画はこちらから

林野庁 林政部 企画課 年次報告班 課長補佐 市川隆史氏

1.「森林資源の循環利用」というテーマに込めた思い

Q.1.令和6年度森林・林業白書では「生物多様性を高める林業経営と木材利用」、令和7年度白書は「森林資源の循環利用の確立に向けて~木材利用と再造林をつなぐ~」がテーマでした。このテーマへ展開された背景にある課題認識や政策的な視点の変化、そして今回の白書を通じて森林・林業関係者や企業、社会全体に特に伝えたかったメッセージを教えて下さい。

市川氏(以下敬称略))令和6年度森林・林業白書では、原生的な天然林における生物多様性だけでなく、林業生産活動を行う森林における生物多様性の確保の重要性も述べられています。その中で、生物多様性の観点も含めて持続的な経営が行われている森林から生産される木材が、需要者に評価され、その利用が拡大していることは、山元の利益の確保や伐採後の再造林等にもつながり得るものであるとしています。

生物多様性や持続性といったキーワードは、令和7年度森林・林業白書の特集においても同様ですが、今回は、木材を利用すていただく企業の皆さまにより近い視点から論じているという事でご理解いただければと思います。

今回の白書で伝えたかったのは、持続性の確保された国産材への期待が高まっている中で、それに応えるためには相応のコストや時間がかかること、それを関係者間で理解しあいながら、相互の協力の下、木材利用と再造林をつないでいくことが重要であるということです。

2.森林資源の循環利用を実現する上での課題

Q.2.白書では、「伐って、使って、植えて、育てる」という循環の重要性が示される一方、木材利用によって生まれる価値を、次世代の森林づくりへ十分につなげられていない現状もあります。森林資源の循環利用を実現するうえで、この価値の連鎖を妨げている要因(ボトルネック)は、どこにあるとお考えでしょうか。

市川) 主伐と木材利用は一定程度進展しており、再造林も少しずつですが進んできています。しかしながら、立木価格が低迷する中で、再造林や保育に要するコストは鳥獣被害等の要因もあって増加しており、また素材生産から木材加工、消費に至るまでが多段階となっている中で、川下で生まれた価値が川上の森林整備まで届きにくい構造もあります。

ボトルネックは特定の工程にあるという事ではなく、サプライチェーンの中で関係者が木材を始めとする森林がもたらす価値を共有する関係にあるとの認識の下、相互に連携した取組が重要であると考えています。

3.「100年先を見据えた森林づくり」という考え方について

Q.3.ご後援では、森林資源の循環利用には、現在の木材利用だけでなく、その先の森林づくりまで見据える視点が重要だとお話しいただきました。植えてから利用できるまで長い年月を要する森林の、こうした「時間を超えて活をつないでいく」という視点を、企業や社会全体が共有していくためには、どのような意識の転換が必要だとお考えでしょうか。

市川)木材を他の工業材料と同じようにみてしまうと、その裏にある植えてから収穫に至るまでの年月と投じられる労力を想像することはなかなか難しいのかもしれません。

森林は次の世代へ引き継いでいく資源であるという視点を持つことが重要です。木材の供給側がコストに関する情報などを伝達し、共有することが重要ですが、持続性の確保された木材の供給・利用に向けて双方向の歩み寄りが重要であると考えています。

4.川上・川中・川下、そして社会をつなぐ循環について

Q.4.今回の白書のテーマである木材利用と再造林をつなぐ取り組みに対し、足立幸司教授の講演では「木は地域社会のOSである」という視点から、森と社会のつながりについてお話がありました。林野庁のお立場から、川上・川中・川下だけでなく、どのような連携が今後必要だとお考えでしょうか。

市川) 足立先生のご講演の中に、川上・川中・川下のほかに、川外の関係者というお話がありました。まさに今、森林や木材に対する期待や関心が高まる中で、これまでの森林・林業・木材産業に携わる方々だけでなく、他の産業分野も含めた幅広い主体に参画いただくことが、森林や木材と社会との接点を増やしていくことにつながると感じています。

5.木材利用側(企業・設計者・デザイナー)への期待

Q.5.今回は住宅メーカー、デベロッパー、設計者、木材関連企業、金融関連など、多様な分野の方々が参加されました。木材を利用する側の企業や実務者に対して、今後どのような役割や行動を期待されていますか。

市川) 木材を利用することと、その先に次世代の森林を作っていくことを一体的にとらえていただけると幸いです。最近では、建築物に木材を利用するだけでなく、その木材の生産に伴い伐採された跡地で自ら再造林に取り組まれたり、再造林に必要な費用負担の軽減に協力されたりする取り組みも広がってきています。

木材を利用する企業や実務者のみなさまは、森林・林業と社会を結ぶ重要なパートナーであり、その役割は今後ますます大きくなると考えています。

6.山側(森林所有者・林業関係)への期待

Q.6.循環利用の実現は、森林西部や再造林を担う山側の取り組みが欠かせません。森林所有者や林業関係者に期待される変化、今後強化していくべき取り組みについて教えて下さい。

市川)森林資源の循環利用を進めるうえで、森林西部や再造林を通じて森林を育て、次世代へ引き継いでいく森林所有者や林業関係者のみなさまの役割はますます重要になっています。シカをはじめとする鳥獣被害が深刻化するなど、山の仕事を取り巻く環境は厳しさを増していますが、現場では様々な工夫を重ねながら、鳥獣被害対策や造林の低コスト化・省力化に取り組んでいただいています。

今後は需要者や消費者の間で、持続的に生産された木材への関心や期待が高まる中、再造林の実施状況や費用に関する情報について、山側からも伝えていくことが重要になると考えています。

そうした情報共有を通じてサプライチェーン全体の理解と連携を深め、木材利用によって生まれた価値を次の森林づくりにつなげていくことが、森林資源の循環利用の実現に向けて重要だと考えています。

7.白書を「読む」から「行動につなげる」ために

Q.7.白書は森林・林業政策を理解する重要な資料ですが、今回のセミナーのように企業や地域の実践者へ届けることにも大きな意味があると感じました。白書を行政資料として終わらせず、社会の具体的な取り組みへつなげていくためには、どのようなことが重要だとお考えでしょうか。

市川)森林・林業白書は、森林・林業の動向や各地の事例、国の施策などを幅広く紹介しているものです。この白書をきっかけとして、様々な立場の方々に広く森林・林業の現状や課題を知っていただき、自分事として捉え、事例等も参考としながら行動につなげていただくことが重要であると考えています。

今回のセミナーでは住宅メーカーやデベロッパー、設計者、木材関連企業、金融機関など、さまざまな分野の方々に参加いただくことができましたが、森林資源の循環利用は林業関係者だけでなく、多様な主体の理解と協力が不可欠です。

今回いただいたような対話の場を通じて、課題や方向性を具体的な取り組みにつなげられるようにしていくことが重要だと考えています。

8.日本ウッドデザイン協会への期待

Q.8.今回日本ウッドデザイン協会は、林野庁様と木材利用に関わる企業・専門家・実践者をつなぐ場として本セミナーを開催しました。森林資源の循環利用を進めるうえで、こうした分野を横断してつなぐプラットフォームに、今後どのような役割を期待されていますか。

市川)森林資源の循環利用は、多くの主体が関わることで初めて成り立つものですが、それぞれの立場や業務の範囲が異なるため、日頃は互いの課題や取り組みが見えにくい面もあります。

そのため、今回のセミナーのように、川上から川下まで多様な主体が集まり、情報や課題意識を共有できる場には大きな意義があると考えています。引き続きこうした対話の場を通じて、相互理解を深める機会を提供いただくとともに、新たな連携のきっかけづくりにもつながることを期待しています。

9.最後に

Q.9.今回のセミナーにはオンライン参加を含め156名の方が参加されました。最後に参加された皆さま、そしてこれから森林資源の循環利用に関わる企業や実務者へ向けて、メッセージをお願いします。

市川)この度は、セミナーにご参加いただきまして誠にありがとうございました。今回は特集テーマとして、森林資源の循環利用を取り上げましたが、森林や木材への関心は増しており、追い風が吹いていると感じています。

一方で、それをしっかりと「循環」につなげていくには、様々な課題がありますし、個別分野の取り組みだけでは解決できません。

今後も森林や木材に対する期待に応えられるよう、幅広い多様な主体の理解や参画も得ながら、森林・林業・木材産業の好循環を生み出して、森林資源の循環利用の確立を目指していきたいと考えています。引き続きの皆さまのご理解・ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

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