調査研究
【開催報告】林野庁ご担当者に聞く『新たな「森林・林業基本計画」変更セミナー』を開催
「百年つづく『森の国・木の街』へ」森林と木材利用のこれからを考える
2026年9月3日、一般社団法人日本ウッドデザイン協会は、「新たな『森林・林業基本計画』変更セミナー」を開催しました。
2026年6月5日に閣議決定された新たな森林・林業基本計画をテーマに、林野庁 林政部 企画課 課長補佐の安田幸司氏を講師に迎え、森林・林業・木材産業をめぐる政策の方向性や、これからの木材利用について理解を深める機会となりました。

当日は会場とオンラインを合わせて175名が参加。参加会社・団体数は87にのぼり、森林・林業関係者に加え、木材利用、建築、地域づくりなど、さまざまな分野から関心が寄せられました。
「百年つづく『森の国・木の街』へ」
今回の基本計画では、「百年つづく『森の国・木の街』へ」を掲げ、森林を「植える・育てる」だけでなく、「使う」ことまで含めた循環として捉え、森林・林業・木材産業の好循環をつくっていく方向性が示されています。
講演では、森林資源を活用しながら適切に森林を管理し、木材利用によって生み出された価値を、再び森林の整備や次世代の森林づくりへつなげていくことの重要性が紹介されました。
森林資源を「使う」ことと、木材利用の拡大
木材利用の裾野を住宅分野にとどめず、非住宅建築や中高層建築、店舗、オフィス、公共施設、内装などへ広げていくことも重要なテーマです。
単に「木を使う」ことを促すのではなく、脱炭素やウェルビーイングなど、木材利用によって生まれる価値を見える化し、社会へ伝えていく。その先に、国産材の新たな需要を生み出していく考え方が示されました。
川上から川下までをつなぐ「正の連鎖」
森林の管理、林業、木材の加工・流通、建築や家具などの利用を、それぞれ別々の産業として捉えるのではなく、一つの循環としてつないでいくことも、今回の計画における重要なポイントです。
木材利用の拡大によって国産材の需要を生み、その需要が林業や木材産業の成長を促し、さらに森林の適切な管理や再造林へとつながる――。
こうした「正の連鎖」を、地域の中でどのようにつくっていくのか。森林から都市までを一つの循環として捉える視点が、これからますます重要になります。
森林の持続性をどう確保するか
質疑応答では、森林認証制度についても質問が寄せられました。
安田氏は、森林認証制度について、持続可能な森林経営を実践する上で有効な取組の一つとの認識を示し、林野庁ウェブサイトでの普及に加え、「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」「森林に関するTNFD情報開示の手引き」などにおいても、森林認証や認証材の利用を紹介していると説明しました。
また、森林の持続性を確保する制度的な取組として、森林法に基づく森林計画制度についても紹介。2025年からは森林経営計画に「森林の生物多様性を高めるための取組」を記載できるようになっており、今後、その普及を進めていくとの回答がありました。
「森を守る」と「林業を成長させる」をどう両立するか
「林業を成長産業と位置づけること」についても議論が及びました。
森林には木材を生産するだけでなく、水源涵養、土砂災害防止、生物多様性の保全など、国土や暮らしを支える多面的な機能があります。
一方で、森林・林業・木材産業が地域経済を支える産業として成長していく可能性もあります。
「森を守ること」と「木を使うこと」を対立するものとして捉えるのではなく、森林の多面的な価値を守りながら、木材利用を通じて森林・地域・産業を循環させていく。
今回のセミナーを通じて、新たな基本計画が描く森林・林業・木材産業の方向性が浮かび上がりました。
「森の国・木の街」を、地域とのつながりから
「百年つづく『森の国・木の街』」を実現していくためには、国の政策だけでなく、森林を有する地域、木材を生産する地域、そして木材を使う都市、それぞれの主体がつながっていくことが欠かせません。
日本ウッドデザイン協会では、こうした考え方を共有する「森の国・木の街」宣言者との関係構築を深めるとともに、各都道府県や市町村とのつながりを広げています。
地域ごとの森林資源や文化、産業、暮らしに目を向けながら、それぞれの地域が持つ可能性を木材利用やウッドデザインにつなげていく。そうした地域との対話と連携も、これからの重要なテーマです。
今回のセミナーには、全国のさまざまな立場から175名が参加しました。参加者からは、「示された基本計画書を読むだけでなく、実際に話を伺い、疑問や評価をフィードバックさせるのも現場に関わるものとして大切。今回は改めてこういう機会が大切だと思った」といった声も寄せられています。

新たな森林・林業基本計画を知ることにとどまらず、それぞれの地域や立場から、森林と木材利用のこれからを考える。
「百年つづく『森の国・木の街』」に向けて、森林から都市までをつなぎ、次の世代へ森林と木の価値を引き継いでいくための一歩となるセミナーとなりました。 なお、講義動画および講義資料につきましては、近日中に公開を予定しております。準備が整い次第、あらためて本ページにてご案内いたしますので、いましばらくお待ちください。

